クラブ・メランコリー

小賢しい事を考える頭のオンオフ切り替えができるようになりたいお兄さんのブログ

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ハルジオン

Author:ハルジオン
こないだ22歳になったけどアイコンは「20歳」と表記されたままのお兄さん。

もう永遠の18歳でいいよ。
あ、それだと酒飲めない!

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    SS「タイトルなし」

    2008/09/17(水) 00:49:40

    小説上げました。

    SSと言う割には長くなっちまいました。

    それでもいいよと言う方は追記からどうぞ。


     気がつくと私はそこにいた。どうやら私は死んだらしい。
     あたり一面に。とまでは行かないものの、今までに見たこともない量の彼岸花が咲いているのだ。
     話だけは聞いたことのある、三途の川とはここのことなんだろう。
    「……」
     だんだんと、少し前の出来事が思い出される。
     お経を読み上げるお坊さん。すすり泣く両親や兄弟、叔父さんや叔母さんも目の周りが赤い。そして、青白い顔で目を閉じる私自身。
     お葬式だ。
     ……そうだ。病気だ。治る見込みはないに等しい、難病とやらにかかってしまったんだった。
     とすると、ついに病魔が私の体を食い尽くしてしまったということか。……なんか、こう表記するとやたら詩的だね。
     ずっと怖かったけど、こうやって死んでみると意外とあっけない。
     むしろ、今まで満足に体を動かせなかった分清々しい気分だ。
    「……?」
     水音と、何かが軋むような音が聞こえる。
     船の音だ。そして目の前には、最初からここにあっただろうか、桟橋が架かっている。
    「お迎えだ。乗りな」
     船頭さんは小粋に微笑んで、私に乗れと促した。
    「あ、はい……」
     別に拒むような理由もない。未練はない。と言えば嘘にはなるが、もうどうしようもないことくらいわかっている。
     変に騒がず、流されるままに。いつだってそうやって生きてきたのだ。
     言ってみれば、目の前を流れる川のように。……また詩的だね。
    「……」
     だけど船頭さんは、少し驚いたような表情を作る。乗れって言ったのはそっちなのに。
    「あの……どうかしましたか?」
    「いや……やけに素直だなと思ってね。お前さんくらい若い人なら、死んだことに納得もいかないで頑なに船に乗ろうとしないから」
    「はぁ、そういうものなんですか」
    「そういった輩は置いていく。ほっといたら川原に住む鬼達が、石積みをさせるんだ。両親を悲しませた罪だとか言ってね。罪を裁けるのは閻魔様だけだっての」
     呆れた様子で肩をすくめる船頭さん。
    「まぁ、お前さんは素直だね。好感が持てる」
    「騒いだところで……未練が晴れるわけでもないですから」
    「……諦めもいい。さ、乗りな」
     桟橋を渡り、船に乗り込む。片方に体重がかかり、少し揺れた。
    「うわっ……」
    「……っと」
     よろけた私の腕を掴み、助けてくれる船頭さん。
    「優しいですね」
    「言ったろ? 好感が持てるってさ」
     そう言って、再び小粋に笑った。
    「あ、そうだ。渡し賃」
    「?」
    「ほら、首にかかってる袋があるだろ。その中の、巾着の中身全部だ」
     言われたとおりに、首の袋に手を入れる。巾着と……これは、おにぎりだろうか。
    「……ってか、なんですかこの格好……」
     ようやく気付いたが、私の今の格好はだいぶいただけない。
     センスのかけらも感じない白装束に、ハギレで作ったような首にかかった袋。死んだにしても、もう少し見た目を気にしたいところだ。
    「ハハハ、ダサいよな。あたいもそう思う。だけどまぁ、諦めな」
    「ですね。死人に口無しです」
     少々納得は行かないものの、先人の諺を思い出した。死んでから使うとは思ってなかったけど。
    「えっと、これですね。巾着。って、重っ!?」
     ズッシリと、両手にかかる巾着の重量。相当な数の小銭が入ってるようだ。
    「へぇ、アンタ、生前はいろんな人に想われてたんだね」
    「どういうことですか?」
    「渡し賃になるその金は、アンタとつながりのある人全員の財産だ。慕われたり、信頼されてたり、大切にされてたり。そんな人たちの財産だ」
    「へぇ……」
     その言葉に。思わず両親や、兄弟や、友達の顔が思い出された。
    「……っく……」
     ここでようやく、自分が死んだことを真剣に受け止めた。受け止めてしまった。
    「お父さん…お母さん…」
     一度決壊してしまえば、あとは自力で涙を止めることなんて出来ない。
     今までの思い出がフラッシュバックして、もう戻れないことがただただ悲しかった。
    「ひぐっ……。ううっ……うあぁぁぁぁぁ……」
     どうしよう。涙が止まらない。早く泣き止んで船を出してもらわないと、船頭さんに置いていかれてしまう。
    「……ここじゃどんな奴でも泣くもんさ。泣きな。そういう涙は想定済みだ。好きなだけ泣いとけ。置いていきゃしないさ」
    「ひっく……はい……あり、がとう、ございます……」

    ・・・

    「じゃあ、これ。巾着です」
     程なくして泣き止んだ私は気持ちを落ち着けて、船頭さんに巾着を渡す。
    「毎度。おお。本当に重い。生前のお前さんの人望が窺えるよ。いい人生だったみたいだな」
    「また泣いちゃうんで、やめてくださいよ」
    「ははは、悪いね」
     船頭さんはさして悪びれた様子もなく、快活に笑って船を漕ぎ出した。この短時間でずいぶんと仲良くなった気がする。
    「この川は、その人が生前に犯した罪によって川幅や深さが変わるんだ。見た感じ、お前さんはすぐに着きそうだ」
    「まぁ、若いですし。無難に生き続けてきたので」
    「それが案外難しいのさ。大衆的に見て『無難』に生きることがどんなに難しいか」
    「そういうものですか……」
    「そういうこと」
     ニカッと明るい笑顔で頷くと、舵をとるために腰を落とす船頭さん。
    「……」
     慣れたものだなぁと、つい感心してしまう。
     そして、その熟練の域にまで達した舵さばきを見て。
     自分は結局何も出来ずに。何もこの手に掴むことなく死んでしまったのかと、今更どうしようもない未練を引きずっていることに気付いた。
     死ぬ前にアレが食べたかった。死ぬ前にあそこへ行きたかった。
     そんな未練が霞むくらいの大きな未練だ。可能性が全てゼロになったということだ。
     こんなことなら、もっと毎日を必死に生きるべきだったなんて。どうしようもない未練。
    「……船に乗ってる死人ってのは、みんなそんな顔してる」
     ふと、船頭さんが声をかけてきた。真剣な様子が伝わる、低い声だ。
    「なぁ、仲良くなっちまったお前さんだから聞くが……。そんな顔をしているときは、何を考えているんだい?」
    「……死ぬまでに、どうして必死になって生きなかったんだろうっていう、未練です」
    「未練……ね」
     私の言葉を反芻しながら、船頭さんは船を漕ぐ。その顔は、真剣そのものだ。
    「お前さん方の未練に比べちゃ小さなもんだけど、あたいもあるよ。未練」
    「船頭さんにもですか」
    「ああ。実はな、あたい本当は死神なんだ」
    「死神が……船頭さんやってるんですか?」
    「ああ。船頭ってのは、死神の下っ端がやる仕事だ。つまりあたいは下っ端なわけだが」
     ……自虐的な話のはずなのに、自慢げに聞こえるのはどうしてだろう……。
    「ずいぶんと長いこと船頭をやっててね。いわゆる出世コースから完全に離れちまってる」
    「はぁ……」
    「で、この前ちょっとした事件があってね。どうしてもあの世に連れて行きたい奴が出来ちまった」
     その瞳に、悔しさがにじみ出る。
    「で、キチンとした死神の仕事をやりたいと思ってたんだが……『船頭もろくにこなせない死神が仕事できるわけないでしょう』なんて、上司に言われちゃってね……『サボらずに今までの仕事をマジメにやるべきだったんだ』って、最近になって後悔しているところさ」
    「自業自得ですね」
    「う、厳しいな。でも言うとおりだ。こんなの、アンタが今考えている未練に比べりゃ小さいだろうが。方向性は同じと思ってね」
    「それで、突っぱねられて……そのままなんですか?」
    「あー……あそこまでこっぴどく言われちまうと、意気消沈もするわけで……」
     ……諦めたように笑う船頭さんに、どうしようもなく腹が立ってしまった。
    「馬鹿っ!」
     大声が出てしまった。生きてたときも、ここまで大声を出したこともないだろうに。
    「……!」
     船頭さんが驚いたようにこっちを見る。
    「まだ、やりなおせるじゃないですか……。もう何も出来ない私と違って、まだ可能性があるじゃないですか……」
     泣いているようだ。前が涙でにじんでよく見えない。
    「……もう何も出来ない私の代わりに、その夢を叶えてくださいよ……」
    「……」
     舟を漕ぐ手が止まってしまった。
    「……悪い。知らん間にお前さんを侮辱しちまった」
    「……」
     今は何も、話したくなかった。

    ・・・

     程なく、船頭さんは再度船を漕ぎ出した。
     お互いの間に、気まずい沈黙が流れる。
     ……言い過ぎた気はしないでもない。こうして話そうともしないのも、少々大人気ないと思う。
     ……でも、この沈黙を破るのは並大抵の度胸じゃ出来ないわけで。
    「……」
    「……」
     そっと、船頭さんの顔を盗み見る。
     少なからず、気にしているようだ。話を切り出したいが、どうにも気まずい。そんな表情だ。
     そしておそらくは、私も同じような表情なのだろう。
    「……」
    「……」
    ―グゥ~……―
     沈黙を破ったのは、何かが唸るような音だった。
    「……失礼」
     船頭さんのお腹のようだ。
    「……お腹、空いてるんですか?」
    「あ~……朝も昼も食べ損ねて……」
     さっきまでの空気が緩んだ。なんとも庶民的な会話が続く。
    「ダメじゃないですか。ちゃんとご飯は食べないと。一日の生活は朝食からですよ?」
    「二度寝と昼寝は気持ちいいんだ」
    「まったく。それで倒れたら元も子もないでしょう」
     そう言いながら、首の袋に入っていたおにぎりを差し出す。
    「はい、これ食べてください」
     船頭さんの性格だ。お礼もそこそこに食べるに違いない。
    「……いや、これは食えない」
     しかし、船頭さんは拒絶する。
    「これは、船を降りたあとに、お前さんが食べるもんだ」
    「で、でも……」
    「死出の旅の本番は船を降りてからだ。高い山を越えて、黄泉の国で裁きを受けなければならない」
     船頭さんの表情は、今までで一番真剣だった。
    「その道中でそれを食べるんだ。飲まず食わずで越えられるような、そんなぬるい旅路じゃない」
    「……」
    「いいか? 死人といっても、裁きを受けるまでは非常に曖昧な存在なんだ。何かしらの変則的な出来事が起これば、その存在すら危うく……むぐっ!?」
     調子に乗って説教を始めた隙を狙って、おにぎりを船頭さんの口に押し込んだ。
    「大丈夫です。生前から小食ですから」
    「うぐっ……む……ご、っくん!」
     ほぼ丸呑みでおにぎりを胃に収めてしまった船頭さん。少々苦しそうだ。
    「……馬鹿野郎! 自分がどうなってもいいのか!」
     口が利けるようになった途端、浴びせられる怒号。
    「いいんです! 先がない私より、先がある船頭さんのほうが大切です!」
     それに負けないくらいの大声で、私も言い返した。
    「だからって、黄泉の国に着けなけりゃあとはお前、消滅するだけなんだぞ!」
    「だから私はいいんです!」
    「……ホントに……こいつは……」
     観念したように、肩を落とす船頭さん。
    「取り返しのつかないことをしちまったんだぞ。わかってんのか?」
    「覚悟の上です」
    「諦めのいいところが気に入ったが……。加えて頑固ときたか」
     少しの思案。そして、口を開く船頭さん。
    「わかった。おにぎりの件はお礼を言うさ。ありがとう、助かったよ。ホントのところは」
    「限界だったんでしょ? 本当はずいぶん前から食べてなかったみたいだし」
    「よく見てるね。ここんとこ、オーバーワーク気味だったのさ」
    「これが、無難に生きる秘訣の一つですから」
    「はは、そんなものか」
     船頭さんの快活な笑顔。しかしそれは、すぐに真剣な表情に変わる。
    「お前さんは、消滅させたりしないさ」
    「……?」
     最後に言った言葉だけは、上手く聞き取ることが出来なかった。
     それから向こう岸に着くまでの間、会話が交わされることはなかった。
     さっきと違うのは、別に気まずくはなかったことかな。

    ・・・

    「さぁ、着いた。あとはこの山道をまっすぐ行くだけさ」
    「ありがとうございます」
    「……辛い道のりだ。気をつけな」
    「大丈夫です」
    「じゃ、あたいは次の仕事があるんで」
     踵を返す船頭さん。私は、その背中を呼び止める。
    「……何だい?」
    「お名前を、教えてくれますか?」
    「……小野塚小町。死人に言うのも変だが、元気でな」

    ・・・

     死出の旅というものは、黄泉の国へと続くこの死出の山を登ることだという。
     険しいわけではないが、歩いても歩いても終わりの見えないこの道に、私の心はすでに折れかけていた。
    「……小町さんの言うとおり、やっぱり苦しいな……」
     後悔しているわけじゃない。むしろ清々しい。
     きっと、小町さんは立派な死神になってくれる。それならおにぎりをあげた甲斐もあるものだ。
     こんな気持ちなら、そろそろ楽になってもいいかもしれない。
     あと5歩歩いたら、立ち止まって、横になって、目を閉じよう。

     ―1歩―
     小町さん、かっこいい人だったなぁ。

     ―2歩―
     あれだけの人を悲しませて、天国にも地獄にも行かないなんて。私って悪い子だなぁ。

     ―3歩―
     本当に悪い子って、地獄にすらいけないんだね。

     ―4歩―
     あれ? 小町さんにはあんなこと言ったけど……私がやりたかったことって、何だったんだろ。

     ―5歩―
     ……ああ、やりたいことが見つからなかったのが未練だったのか……おかしいね。

     立ち止まった。
     体を重力に任せて、地面に横たわる。
     そして疲れきった体に別れを告げるため、目を閉じようとした時だった。
    「ようこそ。黄泉の国へ」
     そんな言葉が、私の耳に入ってきた。
    「え……?」
    「お早いお着きですね。ええ。ちょっとした嫌味ですよ」
     顔を上げると、小柄な人影が微笑んでいた。
    「はじめまして。私はここの裁判長を務めています四季映姫と申します」
     いつのまにか、体が軽かった。体を起こし、覚醒しきっていない瞳を彼女に向ける。
    「まぁ、平たく言えば閻魔ですよ」
    「閻魔……様?」
    「ええ。それでは、あなたの裁判を始めましょう。どうぞこちらへ」
     よく、現状を理解し切れていない。
    「……そうですね。まずはあなたがたどり着いた理由を説明したほうがいいようですね」
     四季映姫と名乗った閻魔様は、コホンと咳払いをするとポツポツと話し始めた。
    「あなたは、死出の旅における大事な供給源を小町に食べさせた。元々、あのおにぎりは空腹を満たすためではなく心を癒すものなのです」
     なるほど。長い旅路において、最も大事なのは精神面。
     あのおにぎりは生前に関わった人たちの真心でできていて、長い旅路で消耗した精神を癒すものだったというのか。
    「不可抗力とも言えますが……さすがに小町も責任を感じました。そして覚悟を決めました。あなたが歩むべき道のりを、彼女の能力で縮めたのです。小町の能力は距離を操ること。まぁ、出来なくもないでしょうが相当大変な作業……。いえ、本来なら小町程度の力では到底できやしないことです」
    「……」
    「不可能を可能にしたのはやはり……あのおにぎりでしょうね。生前あなたに関わった人々の真心が、小町に力を与えたのでしょう」
    「それで……いきなりここに……」
    「最初から距離を縮めたりしなかったのは……単に扱う力が大きすぎて時間がかかったか。あるいは、あなたが限界を迎えるのを待っていたかのどちらかですね」
     おそらく後者だ。
    「ええ。私も同じ意見です」
    「えっ……」
    「閻魔ですから。心だって多少は読めますよ?」
    「はぁ……」
    「後者だからといって、彼女が意地悪で待っていたわけでもないでしょう。筋を通させたってやつでしょうね」
     精神の癒しがない状態で、限界を迎えるまで。せめてそこまで自分を追い込ませた上で力を行使した。
     はじめから距離を縮めてしまえば、ありがたみも何もない。裁くことにすら値しない死人になってしまう。
    「まぁ、ほぼおっしゃるとおりです。もしあなたがいきなりここに到達していれば。私はあなたを裁くことなどなかったでしょう。それは、消滅を意味します」
    「……」
    「……どこか安心しているような感情が見受けられますが、小町はそんな短絡的な死神ではありませんよ」
     何でもお見通しだ。すこし居心地が悪い。
    「通すべき筋は知っている死神です。間違っても、あなたが消滅するような選択肢を選んだりはしませんよ」
    「いや……お恥ずかしいです」
    「素直に謝る。あなたのそういうところは美徳です」
     声のトーンが変わった。あまりにも唐突だったけど、これから裁判が始まるのだろう。
    「ですが……あなたは少し諦めが早すぎる」
     刺すような視線が痛い。何から何まで見透かされているかのような目。
    「時としてそれは美徳にもなり、小町はあなたのそういうところを気に入ったのでしょうが……。諦めが早いというのは、物事に対する執着心がないということ」
     言葉の一つ一つが大きな説得力を持っている。彼女に間違いはないのだろう。間違いがないからこそ、就ける役職なのだ。閻魔様というのは。
    「本来、生というものには異常なまでの執着をしめすべきなのです。そういった意味では、あなたはまだここに来るべき人間ではなかった。川のほとりで、鬼たちの言う『裁き』とやらを受けなければならない。その若さで。両親が健在のままここまで来るのは、異端以外の何者でもありません」
     でもそれは……川を渡る前の私だ……。
    「だったら何故、おにぎりを小町に拒絶された時点で食べさせようとするのをやめなかったのです。それでも食べさせようとすることは、間接的に存在することを諦めたことになるのです」
    「……」
     なんとなく気付いた。これは裁判じゃない……単なるお説教だ……。
    「それともう一つ。あなたは少しおせっかいすぎる」
     まだ続くようだ。こんなに可愛らしい閻魔様なのに、説教好きってどんなミスマッチなんだろう。
    「おにぎりを無理やり食べさせようとしたところにしても。おせっかいな部分のせいでしょう。先程は諦めが早いからだと申しましたが……おそらくはこっちの感情のほうが強かったと思います」
    「言うとおりです」
    「そういった面では、向こう見ずな部分もありますね。まったく……」
     そう言って閻魔様は呆れたように頭を振って、私のほうに向き直った。
    「このあとの裁判では、そういった面も踏まえての判決を下したいと思います」
     ああ。やっぱり今までのは単なるお説教だったんだ。
    「そりゃそうでしょう。裁判とは、しかるべき場所でやるものです」
    「それで……このあとってのは、すぐにはやらないってこと……ですか?」
    「ええ。ちょっとあの死神にお説教をしてこなくてはならないので」
    「えっ……でも……」
    「そうです。半分は、あなたのせいです。しかしもう半分くらいは小町の責任でもあるのです。あなたにはもうお説教はしました。次は小町の番ですよ」
     しかしどうにも申し訳ない気持ちでいっぱいだ。どっちにしろ、小町さんは私が原因で怒られることになるのだ。
    「……本当に、あなたはやさしいですね。これからも、他者を思いやる気持ちを忘れないでください。それがあなたに出来る善行です」
     にっこりと。慈愛に満ちた微笑を私に向けると、閻魔様は私が来た道へ歩き出した。
    「あ、そこ……」
    「当然のことでしょうが。閻魔や死神は、この山を一歩のうちに越えることが出来ますよ。この山は、あくまで死人のための旅路ですからね」
     それもそうだ。
     しかしどっちにしろ、閻魔様が帰ってくる頃には結構な時間が流れているだろう。
     私にはいくらか加減していたようだが、あの閻魔様の本気の説教は相当長いと見た。
     しかも、小町さんを叱り慣れているような口ぶりだった。
    「……ごめんなさい」
     閻魔様が美徳と言ってくれた「素直に謝る」こと。
     どこまでも軽い言い回しで、すでに説教されているであろう小町さんに謝罪するくらいしか今出来ることはなさそうである。
     とりあえず、私が出来る善行の一つ……かな。



    あとがきのようなもの
    はい。ということで東方でした。
    中盤まで読まないとわからないようにしてみたのですが、上手くいったかな……。
    ていうか、わかる人は小町の口調ですぐわかると思う。

    書くに当たっては書きたいシーンありきで書いたので、おかしな方向に帰結した感じがします。
    ちなみにエンディング書き直す前はもっとひどかった。
    こういう話で「あなたに出来る善行は生きることです」はないかなと。

    参考資料は「東方花映塚」のキャラ設定小町の項。
    バックストーリーとして、緋想天の小町シナリオが少々絡んでいたりしてます。

    この話を書くに当たって、テーマソングと言うのも変ですが。
    石鹸屋の「HIGAN BABY~Tell me~」を設定してるつもりです。
    というかこれ聴いて、何らかの形で小町をフィーチャーしたかったんですね。
    で、紆余曲折あったらこんなお話が出来ていました。

    こうしてSS書いてあらためて実感しましたが。
    たとえSSでもある程度ストーリー考えて書き始めないとダメですね。
    あちこち破綻してる気がする。

    東方小説と言うことは伏せようと思って。
    タイトルなしでいきますね。
    ここまで読んでいただきありがとうございました。
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    小説TB:0CM:2
    コメント

    小粋な船頭さんって時点で薄々、小町かな? って気がしていた者です。
    確かに破綻のないストーリー作りは大変ですよね。
    私も昔、小説書くならプロット作っとけよと怒られたことがあります。

    本編の方ですが、十分に読める内容で良かったです。
    言うことがあるとすれば、主人公が良い人過ぎることでしょうか……って言っても、私では対案すら用意できませんけどね^^;
    (設定面での?は東方なのでスルーで)
    molmol #vnrHYOb6|2008/09/17(水) 02:11 [ 編集 ]

    >>molmolさん
    読んでいただきありがとうございます。
    まぁ、いい人すぎたから石積みもしないで黄泉の国に行ったし巾着も重かったと言うことで。
    >設定面での?は東方なのでスルーで
    こういった部分は、やっぱり聞かせてもらいたいです。
    もしかしたら設定を生かしきれてないのかもしれませんし。

    プロット作るのすごい大事だと、最近痛感してます。
    でも、作りこみすぎるとプロット書いて満足してしまう罠。
    ハルジオン #WCSj23LI|2008/09/18(木) 01:39 [ 編集 ]
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